かつては当社もそうだった。
設計事務所の名が売れていようがいまいが、いくら実績があろうと
ディベロッパーは企画設計を無料でやらせようとする。
理由は自分たちの土地営業がそうだから。
売れるまではいくら客に紹介しても1円にもならない。
だからその下につく設計事務所もそうしなさいと。
契約したらしたで、設計料は自分達の仲介料3%(片手分)と同じにしなさいと。
全てディベロッパーの論理。
設計業界の業務標準報酬は無視され続けてきた。
それが5年前のリーマンショックで変わった。
個人的には不動産大爆発と呼んでいる。リーマンより半年以上早く起きたから。
全ての過去の企画設計を洗い出し、一つずつ値段をつけていった。
1件軽く10万を超えていた。複数回変更したものは20万以上だ。
傾斜地に至っては初回だけで30万を超える。
営業用の企画設計は金額に治すと、それにより獲得した実施設計監理料をはるかに超えていた。
本末転倒とはこのための言葉である。
ならばこれを商売にするべ。そう思った。
さよならディベロッパー、そう心の中で宣言した。
調べてみると、今では大手のディベロッパーは有料で既知の設計事務所に企画設計を依頼していることが分かった。
当社は企画は有料ですと宣言する鉄道系大手設計事務所も現れた。
因みに設計施工のゼネコン任せがメインの不動産大手A社は初回10万。
変更分合わせると20万を設計事務所に支払う。
自社で設計部を持つ大手B社は7.5万だが、土地取得時にはまとまったボーナスという形で支払う。
どちらも内部では企画設計をやらないのだ。
ゼネコン設計部だって殆どやらない。
というよりこの特殊な業務をこなせない。
中堅で払っているというのはまだ聞いていない。
何度か打診があったが3万程度だ。
個人投資家レベルではそれ以下で何とか出来ないかと言われた。
どちらも当社の料金表を見せてお断りした。
未だに契約が取りたくて無料奉仕する設計事務所がいる。
無料ゆえに手が空いている未経験の若い人に任せて少しでも経費節減。
もしくは実際の経験もないのに十分な調査もせず確信も持てないままに提出。
結果、到底現実味のない企画が世に出てくる。
確かな土地に投資したいのなら正確な企画設計は必須のはず。
それを無料にし契約する事で払ったことにするなどという、ツケと出世払いでは通用するはずもない。
時代錯誤もいいところである。
もう変わってしまったのだ。強い中堅ディベロッパーの時代は終わっている。
物が足りても文化無し。
故佐藤美紀雄先生がそのようなことを仰っていた。