役所との折衝方法

役所ごとに集合住宅等の指導要綱がある、この際条例化されたものは除く。
この指導要綱だが、丸呑みしてはいけない、勿論設計事務所だから遵守するのは当然だが、何せおかしな要綱も多々ある。
修業時代に叩き込まれたことがある、それは要綱の少ない文章に惑わされないこと、主旨を踏まえて役所が望むことの真の意図を察することが大事だと。
ある事例でマンションの住戸面積の割合を55平方米を8割、残り2割を75平方メートル以上にしなさいという要綱があった。
この時代錯誤の面積設定から読み取れるのは、兎に角平均で60平方メートル以上のファミリータイプがほしいと言うこと。
それ以上の要件を揃えて伺いを立てると望む返事が得られた。

ところが役所との折衝の経験が浅いとこうはいかない。
そのままストレートに聞いてしまい、役所側もストレートにシンプルに指導要綱の文面を繰り返すのみ、意図が伝わっていない。

出来るだけ具体的に図面を示し、何がやりたいかを伝えていないと相手も一般論できたからこちらも一般論で答えたと言うことになる。
役所の指導要綱は生き物のように時代ごとに内容を変えていく。
絶対普遍の憲法とは訳が違う。
少しでも住宅が欲しければワンルーム規制を緩め、良質にこだわれば住戸面積の平均値を上げてくる、さらに活性化がほしくなれば商店を義務づける。

面積の設定も役所ごとに様々、ただ現実離れしてはいけない。

賃貸のワンルームで駐車場を3割設けなさいと書いてあるから絶対条件だと勘違いする人もいる。
指導要綱に書いてあるからと役所に個別に相談もせずに丸呑みする人もいる。
大事なことは相手の主旨を見分けること、反対するのでなくそこに至った経緯を想像し現在では何が合わなくなっているのか伝えてあげること、である。

役所は民間の会社とは全く雰囲気が異なる、生涯を一つの職場と決めた者との違い。
よく言えば大家族的、悪く言えば皆同じ。
一人だけ周囲と異なった意見を言うなんてことはあり得ない。
だから相談するときは相手の立場を壊さないようにしなければならない。
そうしながらじわじわと詰めていく、これが設計事務所の生きる道。