以前CADって何、と書いたことがある。
「CAD」とは道具の名前で、道具をお願いしますと言われても、大工さんに家づくりを依頼するのに
金づちお願いしますというのと同じ、と書いた。
では「CAD図面お願いします」ならいいのか?同じこと。
CADという道具を使用して図面を書いてくれと頼んでいるのと同じ。
それはCADオペレーターの仕事。
我々設計者の手描スケッチを基にCADに入力しなおす作業を依頼することである。
CADを使って何を入力したいのかという大元の問題である。
小説家に作品を依頼するのに「ワープロ原稿お願いします」とは言わない。
クラシック作曲家に作曲を依頼するのに「譜面作成お願いします」とは言わない。
もし作曲そのものの依頼という意味でその様に言えば大変な侮辱になる。
同様に建築家に「CAD図面お願いします」とは言ってはいけない。
データだけが欲しいのかと思われる。決して建築設計を頼む言い方ではない。
我々建築家は一つ一つ作曲をしているのだ。
個々の敷地の多様な要件、
難解な法規解釈と要綱、必要な構造設備、をすべて理解した上で
創造という啓示をかぶせる。
真っ白な敷地図をキャンパスに見立てて
遠くからイメージが浮かぶまで見続ける、そうしてから初めて
細い鉛筆の先を鋭くとがらせ、スケーターのように白い紙の上を滑らせる。
神は指先に宿る、のだ。
それが理解できない者は建築という繊細な作業は決して出来ないだろう。
CADなどという無粋な道具は最後に写し取るために登場するのみ。
途中には日影規制や天空率計算の過程でDXF図面、3D図面も大勢出てくる。
ゼネコンの設計ではBIM設計が主流だ。2次元CADはもう時代遅れなのだ。
以上の理由により「CAD図面」という言い方は固くお断りします。
必ず「建築設計」を依頼してください。
湯島マンションの為のスタディ用スケッチ